化学科

実験の繰り返しの中に新たな発見がある

化学は自然界のさまざまな現象や、
暮らしの中に存在する物質に注目する発見と創造の学問。
化学の原理と伝統的な手法を土台として実験による試行錯誤を繰り返しつつ、
新しい発想や発見ができる柔軟な頭脳を育てます。


専門科目

【有機化学】【無機化学】【物理化学】【分析化学】
【構造化学】【高分子化学】【環境地球化学】
【エネルギー化学】【化学英語】

「自分の手を動かして確かめ・基礎に立ち戻って考える教育」そこから生まれる発見力や創造力・応用力の強さは過去の卒業生で実証されています。

実験の楽しさが、新たな分野の興味につながる。

化学科3年生

私は幼い頃から理科に興味があり、中学・高校と上がるにつれて、特に化学が面白いと感じるようになりました。大学でもっと化学について勉強したいと思い、化学科を選択しました。1・2年生では化学だけでなく、3教科(英・理・数)も学習します。化学科だからといって、化学だけを勉強するのではなく、幅広く生物・物理・化学の基礎を学ぶ期間になります。授業自体の難易度はすごく高いわけではないですが、勉強をサボるとついていくのが少し難しくなるかもしれません。

化学科を選択してよかったと思うことは、とにかく実験がたくさんできること!これにつきます。もともと実験が面白いというのが一番ですが、化学実験では反応の待ち時間も多く、そんな時に先生や学生同士、化学についてはもちろんのこと、プライベートな話題まで出て盛り上がり、過ごせたことがとてもいい思い出です。もともと無機化学に興味があったのですが、化学実験で有機化学をやったら、とても楽しく面白かったので、今は有機化学についてもっと勉強したいと考えています。

学習院大学は、先生方がとにかく優しく、質問に行けば必ず丁寧に教えてくれます。学生一人一人の相談にも乗ってくれるので、そんなところも魅力の一つです。

世界で初めて得られたデータを、最初に見られる瞬間。

化学専攻 博士後期課程2年生

現在、大学院で深共融溶媒の研究を行っています。このテーマに興味をもったきっかけは、高等科の化学部で行った食塩を800℃まで加熱して液体にする実験です。液体の食塩は構成粒子がイオンのみであり、イオンが動きまわる溶融塩と呼ばれる状態となっています。この実験が印象に残っていたことから、常温の溶融塩であるイオン液体にまず興味を持ち、その類似物質である深共融溶媒に興味を持つようになりました。

深共融溶媒は、未だ基礎研究段階にあるため身近には使われていません。将来的には有機合成や金属仕上げなどへの利用が期待されています。一方、レーザーによる分光分析は、製品を破壊せずにその純度や状態を検査することなどに、現在も既に使用されています。

大学院に進学してよかったと思う点は、国内外の学会発表や若手研究者の交流会など、お互いの研究について意見交換する場に数多く関われることです。また世界で初めて得られたデータを最初に見られることもあり、やりがいを感じています。

世界でまだ誰も実施したことのない研究を行い、その成果を外部に発信する機会が大幅に増える点が大学院の魅力だと思います。

人とのつながりの中で、社会への目的意識を持てた。

化学科 卒業生

可能であれば地元に戻って就職したいと考えていたことと、大学で学んだ化学の知識や研究の経験を活かしたいと思ったことから、技術職公務員を選択しました。現在は、甲府市上下水道局で水質測定を行なっています。

在学中は、講義を通じて様々な知識を習得できましたが、色々な背景を持つ人との関わりの中で自分自身の個性を認識し、社会への目的意識を持てたことが一番の学びだったかもしれません。

学部2年の頃、校内の空きスペースで友人と問題を出し合ったり、図や式を好きに書いたりしながら勉強会を行っていました。私の学部時代の成績は、その友人との勉強会に支えられていた部分がとても大きかったと思います。

教室の前を通りかかってそれを知った教授が、理学部関係者何名かを連れて様子を見に来られた時があったのですが、タイミング悪く、ちょうど遊んでいる時に重なってしまい、怒られたのを覚えています。今ではそんな一コマも、とてもいい思い出です。

  • 2013年3月学習院大学 理学部 化学科卒業
  • 2015年3月学習院大学大学院 自然科学研究科
    博士前期課程修了
  • 2015年4月甲府市 環境部
  • 2022年4月甲府市 上下水道局 工務部
化学科/教員紹介DEPARTMENT OF CHEMISTRY
  • 秋山 隆彦
    アキヤマ タカヒコ秋山 隆彦教授[有機合成化学]
     
    「触媒」と聞いて、何を思い浮かべますか?触媒は、金属錯体だけではありません。秋山教授は、優れた触媒作用を示す有機小分子を見出し、新しい「有機分子触媒」として注目を集めている。秋山研究室では、高い選択性を示す優れた触媒をデザインし、有害物質を用いない地球環境にやさしい有機合成反応の開発に情熱を傾けている。「日夜フラスコに夢を託し、予想もしない新たな反応が進行するのをわくわくしながら待ち構えているんだ。医薬品・農薬 などの生理活性を持つ有機化合物の合成も簡単だよ!」と秋山教授は楽しそうに語る。日本化学会学術賞、有機合成化学協会第一三共・創薬有機化学賞、名古屋シルバーメダル、アメリカ化学会Arthur.C.Cope Scholar Award、フンボルト賞、有機合成化学協会賞を受賞
  • 稲熊 宜之
    イナグマ ヨシユキ稲熊 宜之教授[無機化学・無機固体化学]
     
    無機化学はすべての元素を対象にする学問である。人間が個性をもち、環境に大きく影響されるように、各元素も個性をもち、その組み合わせによって生じる物質はさまざまな性質を示す。稲熊教授は、これまで酸化物を中心にさまざまな新規物質を合成し、その構成元素、結晶構造、化学結合性、物性の相関を明らかにしてきた。特にリチウムイオン伝導性酸化物に関する研究は国内外で注目を集めている。学生とともに想像力と叡智を結集して、鉱脈を探す山師さながら新規物質の探索に励んでいる。日本セラミックス協会学術賞を受賞
  • 岩田 耕一
    イワタ コウイチ岩田 耕一教授[物理化学・分光学]
     
    「フラスコの中の分子たちは、1秒間に10兆回ぶつかっています」とニコニコ話す岩田教授。化学反応が起こる様子を観測してその仕組みを分子レベルで解き明かすために、10兆分の1秒ごとに測定ができる分光装置を作ってしまうらしい。これまでに、世界最高の性能をもつ分光測定装置をいくつか作ったことがあるという。「物理化学の研究では、自由な想像と定量的な考察の両方を楽しめます」、「世界中の研究者仲間との付き合いが何よりも楽しくて刺激的です」と、本当に研究が好きな様子。家庭では、職業をもつ奥さまと二人三脚で奮闘するよきパパでもある。日本分光学会論文賞、日本分光学会 学会賞を受賞
  • 大野 剛
    オオノ タケシ大野 剛教授[環境地球化学・分析化学]
     
    “我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへいくのか” 誰しも一度は持つ根源的な問いではないだろうか。私たちの住む地球がどのようにでき、生命がどのような環境で進化してきたのかを解き明かすため、大野教授は最先端の分析化学を駆使し、学生とともに研究に取り組んでいる。国際的な共同研究により、研究室には世界各地から太古の岩石が運び込まれる。これらの岩石を元素ごとに分離し、さらに高精度質量分析計で同位体ごとに検出することにより、岩石がいつできたのか、どのような環境でできたのかがわかるという。また、最近ではこの質量分析計は福島原発事故に関連する環境放射能研究にも役立っている。
  • 狩野 直和
    カノウ ナオカズ狩野 直和教授[有機元素化学]
     
    18世紀末頃までは有機化合物をつくるためには「生命の力」が不可欠であると考えられていたが、現代では化学者が神の手を操るかのように結合を組み替えられるようになり、自然界には元々存在しない新しい化合物までも作れるようになった。狩野研究室では元素の周期表で右側にある元素を巧みに使いこなして、新しい構造をもつ化合物を創り出す研究が行われている。通常は不安定で存在できないような分子でも、工夫次第で合成できるそうだ。元素の特性を上手く引き出すと、分子がキラキラと光ることもあるという。新しい化合物を作るだけでは飽きたらず、結合の新種までも創りだしている。文部大臣表彰若手科学者賞、ケイ素化学協会奨励賞を受賞
  • 草間 博之
    クサマ ヒロユキ草間 博之教授[有機反応化学]
     
    普段あまり気に留めないかもしれないが、現代の豊かな生活は、医薬品等の生理活性物質や機能性材料などをはじめとする様々な有機化合物に支えられて成り立っている。草間教授はそのような有機化合物を化学合成する際に役立つ、新しい反応の開発を目的として日々研究に励んでいる。例えば、多段階の工程を要していた分子変換を単段階で実現する反応や、これまで知られていない全く新しい形式の反応を、光や金属触媒の作用を巧みに活かすことで実現しようとしている。複雑な構造をもつ有用化合物が、「草間反応」を駆使するだけで簡単に合成できる日が来るかもしれない。有機合成化学協会奨励賞を受賞
  • 糀谷 浩
    コウジタニ ヒロシ糀谷 浩准教授[無機化学・地球化学]
     
    太陽系小惑星にサンプルを取りに行けるようになった現在においても、我々が住む地球の深部を構成している物質を直接採取することはできない。それは、地球内部が超高圧高温の世界であることによる。「地球の中はどうなっているのだろう?」この疑問に対し実験的な方法からのアプローチにより研究を行っているのが糀谷研究室である。地球深部を構成していると考えられているケイ酸塩や酸化物などについて、大型プレス装置を用いた高圧高温実験を行ったり、結晶構造や熱振動などの原子スケールでのふるまいを知ることにより、海洋プレートの沈み込みやマントル対流などの大きなスケールの現象を読み解いていく。日本鉱物科学会賞を受賞
  • 河野 淳也
    コウノ ジュンヤ河野 淳也教授[物理化学]
     
    溶液反応は、化学合成などの分野において広く利用され、生体中でも重要な役割を果たすにもかかわらず、その分子レベルでの詳細は容易に解明されない大問題である。河野教授は、液体を真空中に導入する特殊な方法を用いて溶液中の分子を気相中に取り出し、溶液反応の微視的解明に取り組んできた。溶液表面で起こる化学反応の機構解明などの研究成果を生み出した実験装置は、手巻きのコイルなどが接続された手作りの装置であり、アイデアと愛情がこもっている。世界に2つとない装置を駆使して極微量の液体の反応をレーザー分光や質量分析により観測しながら、溶液とは何かについて考えている。日本化学会進歩賞を受賞
  • 齊藤 結花
    サイトウ ユイカ齊藤 結花教授[物理化学]
     
    微小な対象物を観察する方法といえば、電子顕微鏡や走査プローブ顕微鏡を思いうかべるかもしれないが、可視光をつかうと私たちが肉眼で顕微鏡を覗いて”見る”のと同じカラフルな画像を得ることができる。齊藤研究室では従来の光学顕微鏡を拡張して、ナノメートルという微小な空間分解能で試料を観察する先端技術を開発し、ナノ空間における光と電子の相互作用や、構造の隠れた不均一性を検出する研究をしている。見ることは信じること!自然科学のこの基本に忠実に研究をすすめていくことは、知的好奇心と感性の両方を満たしてくれる。日本分光学会奨励賞を受賞