学習院大学大学院 自然科学研究科
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安達教授の扱う生物材料は幅広い。遺伝学の研究で有名な小型のハエ=ショウジョウバエが中心であるが、他にも、長い棒の先に眼が付いたシュモクバエや、誰もが顔をそむける臭いカメムシまで、貴重な研究材料として大事に扱われる。けれども、ゲテモノ趣味なのかというと、そういう見方は間違っているらしい。なぜなら、他の生き物から見れば、人間こそが最大の風変わりな生き物だからだ。生物のもつ普遍的性質を知るには、ヒト中心の視点から脱却してどこまでも客観性を追求すべきであり、そのためには、どんなにムシがヒトと違って見えても、ヒトとの間に仕切りを作らないだけなのである。ヒトの体内で働くタンパク質の約3割は、脂質二重膜の中に埋もれて存在する膜タンパク質である。水溶性のタンパク質と比べると膜タンパク質は研究が難しく、構造も機能も未だ多くの謎に包まれている。岡田教授は、われわれの視覚の鍵を握る膜タンパク質・ロドプシンの構造を初めて決定したことで世界的に知られる構造生物学の研究者だ。全身全霊をこめて最も困難なテーマに挑みつづける姿勢でつねに周囲をうならせてきた。新たな研究室では、X線回折や分光測定を駆使して、情報伝達に関わる膜タンパク質の構造と機能発現のメカニズムの解明をめざす。Thomson Scientific Research Front Award 2004、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞教授微生物は地球上全ての場所に存在しているが、目に見えないために私たちは普段気に留めることはない。だが実は微生物はとても多様性に富み、全ての生態系の基盤を担っている。有機物を分解したり、高等生物が作れない栄養素を合成したりして、豊かな大地を育んでいる。また、時には人類にとって有害な化合物を無毒化したり、薬になるような有用な化合物を産生したりもする。尾仲教授は薬を作る微生物の研究をしている。素晴らしい能力を持った、まだ見ぬ微生物達を日夜追い求め、その細胞内でどのようにして薬が作られるのかを調べ、医学への貢献を目指している。日本放線菌学会大村賞(学会賞)・日本感染症医薬品協会住木梅澤記念賞等受賞教授「研究を通じて養われる思考力と行動力、いわゆる問題解決能力は、社会に出てからも重要。一人ひとりの個性を互いに尊重し合い一緒に研究することで、学生とWin-Winの関係を築きたい」と話す清末教授。生命科学科で唯一植物を扱う研究室の教授だ。モデル植物シロイヌナズナのLOV光受容体の基礎研究と応用研究を展開。LOV光受容体LKP2とZTLが、短日条件での花芽形成を抑制していることを突き止めた。「研究は攻略本のないロールプレイングゲーム、知的な冒険」と語るその瞳には、未知への挑戦、ロマンを追い求める熱い情熱と輝きがある。日本植物細胞分子生物学会奨励賞を受賞教授嶋田教授は、日本の伝統的な生物遺伝資源であるカイコおよび近縁蛾類のゲノム研究の第一人者だ。変異体や地理的系統などを利用して、胚子、幼虫、蛹(繭)、成虫の各段階における形態、生理、行動、生体防御などを支配する遺伝子を解明している。特に、カイコの祖先がクワを唯一の寄主植物として利用するようになった理由など、長い時間をかけた生物進化と、人類による家畜化の機構を明らかにしようとしている。また、研究成果の産業への応用にも関心がある。「学生には、まずは実験や研究を楽しんでほしい。また、研究の過程を通して、社会で活躍するための力を得てほしい。」と話す。日本蚕糸学会賞を受賞高島教授はアルツハイマー病の世界的な基礎研究者だ。大学生になって真っ先に「脳のことを知りたい」と思われたそうだ。アルツハイマー病は加齢と共に罹患率が増え、病気になると本人はもとより家族の負担も大きい。2025年までにこの病気を克服するとの宣言がG7でなされ、世界中で治療法の研究が行われている。高島教授は微小管結合蛋白質の一つであるタウに注目して研究を進めている。「認知症の治療は近い将来可能になるでしょう。でも、まだまだ脳が老化して行くのを止めなければなりません。」自分の脳を知り、老化を防ぐ研究を一緒に行ってくれる学生を大募集中だ!!Neuroscience Research Excellent Paper Awardを受賞菱田教授は、少し髭を生やされてよく通るお声で話をされ、いつも洗練された講義資料を用意してくださる、いかにも研究と教育へのエネルギーが充実した先生だ。生命の設計図を担っているDNAが傷つけられてしまったとき、生物はどうやって正しい設計図をコピーするのか?数十億年の進化を経て編み出された驚くべき「損傷ストレス耐性機構」を解明するため、菱田教授は酵母や大腸菌を用いて慢性的な損傷ストレス環境を再現する独創的な実験系を開発した。ゲノム不安定性に起因する疾患の治療という未来をも夢に描きながら、メンバーが「楽しく、しかし、真剣に」研究に取り組める研究室を立ち上げたいと語る。日本遺伝学会奨励賞を受賞ミトコンドリアの機能が低下すると、酸化ストレスが増加し、神経変性疾患や心臓疾患など様々な老化に関連した病気を誘発することが知られている。柳教授は、ミトコンドリアの形態と機能を調節する酵素MITOLを世界に先駆けて発見し、MITOLの活性低下が様々な病態に関連していることを示した。MITOL研究を通して、病態の解明と共に、病気の治療に向けてミトコンドリア機能を活性化する薬剤の開発に取り組んでいる。すでに製薬企業との共同研究により、MITOLの機能を調節する薬剤の同定に成功しており、アンチエイジング化粧品として商品開発が進んでいるとのこと。今後の活躍が期待される。日本生化学会奨励賞を受賞11 | FACULTY MEMBERS - DEPARTMENT OF LIFE SCIENCEアダチ タカシ[動物生理学]オカダ テツジ[構造生物学]オナカ ヒロヤス[微生物科学]キヨスエ トモヒロ[植物分子生理学]シマダ トオル[生物遺伝資源学]タカシマ アキヒコ[神経生物学]ヒシダ タカシ[分子生物学]ヤナギ シゲル[分子生化学]※上記8名と西坂 崇之教授(物理学科)が大学院・生命科学専攻のメンバーです。安達 卓教授岡田 哲二尾仲 宏康清末 知宏嶋田 透 教授高島 明彦教授菱田 卓教授柳 茂教授DEPARTMENT OF LIFE SCIENCE生命科学科/教員紹介

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