大鹿教授は離散群の幾何を中心として位相幾何学(トポロジー)の研究をしている。一番のテーマとしているのは、3次元双曲多様体とクライン群の位相幾何学的な研究であるが、最近はそれと関連して、タイヒミュラー空間、写像類群なども重要な研究対象としているという。これらは皆長い歴史を持つ研究対象であるが、位相幾何学と複素解析学、幾何学的群論が交錯する分野だそうで、研究において多様な視点を同時に使わなくてはならないところに特に面白みを感じているという。JMSJ論文賞、日本数学会幾何学賞を受賞教授岡本教授の興味はふたつある。流体力学と数学史である。力学と言っても物理学や工学よりはずっと数学寄りの研究である。特に、ナヴィエ・ストークス方程式が大好きである。流体力学の研究には解析学や非線形偏微分方程式の知識も必要になるから、そうした分野の研究もしている。数学史は数学史プロパーというよりは、それを現代の大学教育に如何に結びつけるかということを課題としている。井上学術賞、藤原洋数理科学賞を受賞教授ファノ多様体という複素射影空間における図形を研究している。この19世紀の末に発見された対象の研究を通じて感じられる、代数幾何学における現代的視点と古典的視点の交錯に魅了されている。数学科に入学する皆さん一人ひとりが、数学が得意である、あるいは数学が好きであるという気持ちを在学中にも持ち続けることができるよう手助けすることに使命感を持ち、そのために自分の研究も含めて色々な数学を楽しみ、その喜びを皆さんに伝えていければと願っている。教授[代数幾何・代数多様体の分類]中島教授は、正標数の体の上の代数曲線を研究分野としてきた。これは、整数論的な視点から見た幾何学とも言えるもので、曲線の代数的基本群の性質や被覆のガロア群の表現の決定など、微妙な扱いを要する事柄に力を発揮してきた。これまで整数論と代数幾何学のはざまを彷徨ってきた、と語る教授だが、最近では代数体の岩澤理論など純整数論的な研究も盛んにおこなっている。それでも、整数論の対象である代数体を、代数曲線との類似を通して考えるという視点に魅力を感じているとのこと。本人は(数学者の中では)常識人であることを自負していて、数学の研究成果をいかにわかりやすく伝えるか、ということにも苦心している。教授数論の興味ある問題は、しばしば、代数体の重要な不変量である『イデアル類群』の構造を見ることに帰着されるが、その性質の多くは未だ厚いベールに包まれている。当大学の卒業生である中野教授は、大学院時代から一貫して、代数体のイデアル類群の構造を詳しく調べている。学習院在学中に古典理論をじっくりと勉強できたことが今日の研究に大変役立っている、とのこと。フェルマーの最終定理解決に使われた楕円曲線にも興味を持っているが、それもある特別な代数体の研究から派生したもので、気持ちはつねにイデアル類群にある、と言い訳じみたことを言っている。教授中村教授の研究分野は、量子物理学にあらわれる方程式、作用素の数学的解析である。研究に用いる数学的な道具立ては、超局所解析、関数解析、散乱理論、スペクトル理論、と、一見すると高度に専門的な数学に見えるが、証明される数学的な定理は、常に物理現象の理解を目指したものとなっている。特に近年は、古典力学系の幾何学的構造が、半古典極限に限らず、シュレディンガー方程式のさまざまな漸近的ふるまい、例えば解の特異性、散乱現象の性質、などに反映される現象に関して、多数の研究成果を挙げている。日本数学会解析学賞を受賞教授[偏微分方程式・数理物理学]「グラフという、複数の点とそれらを結ぶ線からなる図形を扱う世界で生れ育ち、今でも戦っている。負けが多いけど」と笑いながら語る樋口教授。グラフという離散図形の上での古典および量子酔歩の挙動や離散シュレディンガー作用素のスペクトル構造を、確率論、函数解析的手法や幾何学的手法のみならずグラフ理論などの組合せ論特有の手法をも用いて解明することが研究対象となっている。最近はより広い分野も意識して、たとえば心的辞書のネットワークとしてのモデル作りや森林景観解析に離散スペクトル解析を応用することにも挑戦しているようである。教授[離散大域解析学・グラフ理論]現代数学と理論物理学が急接近した90年代初頭、純粋数学の研究対象であるカラビ・ヤウ多様体に”弦理論”と呼ばれる理論物理からの新しい視点が加わり、特にミラー対称性という数学者が思いもしなかった不思議な対称性が見つかった。その90年代に研究生活を始めた細野教授は「ミラー対称性に関わる数理現象から数学的事象を読み取る」ことを目標に掲げて、以来精力的に探求を続けている。特に、カラビ・ヤウ多様体の変形族とそれに付随する多変数超幾何微分方程式の性質に関する研究を長く継続している細野教授は、"はやり"の研究に惑わされるのが嫌いな研究者である。教授いろいろな空間の地図を描くことを仕事とする「幾何学者」である。近代の地図の歴史においては、ガウスから始まりリーマンそしてアインシュタインという立役者たちによって、幾何学という土俵にごく自然に解析学(微分方程式)と物理学(場の理論)が持ち込まれてきた。山田教授もその流れに刺激を受けつつ、一般相対性理論および幾何構造の変形理論という分野を中心に、気になる空間を探し出し、そしてその空間の地図を描いてきた。数学の言葉は時にその高い専門性ゆえに強面であるが、それにひるむことのないように素朴な好奇心を育てることを日々心がけている。教授11 | FACULTY MEMBERS - DEPARTMENT OF MATHEMATICSオオシカ ケンイチ[位相幾何学・離散群]オカモト ヒサシ[数理流体力学・非線型力学]タカギ ヒロミチナカジマ ショウイチ[整数論]ナカノ シン[代数的数論]ナカムラ シュウヒグチ ユウスケホソノ シノブ[数理物理学・複素多様体]ヤマダ スミオ[微分幾何学・幾何解析]大鹿 健一岡本 久高木 寛通中島 匠一中野 伸中村 周樋口 雄介細野 忍山田 澄生DEPARTMENT OF MATHEMATICS数学科/教員紹介
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